WOW! Indonesia Coffee

世界に誇るインドネシアのコーヒー
自然・文化・味わいの魅力を紹介

インドネシアと聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

バリ島の美しいビーチ、ジャカルタのにぎやかな都市、神秘的な寺院、美しい棚田、そして深いジャングルに囲まれた島々─。実はこの国は、東南アジアの中でも独自の文化と豊かな自然に恵まれ、世界有数のコーヒー生産国としても知られています。

観光地の魅力と並んで忘れてはならないのが、インドネシアが世界有数のコーヒー生産国であるという事実です。2023年には世界全体の生産量の約6〜7%を占め、世界第3位にランクインしました。(出典:国際コーヒー機関 2023年時点)

それにもかかわらず、「スマトラ」「ジャワ」「トラジャ」といった名前を聞いても、多くの人はすぐにインドネシアのコーヒーを思い浮かべるわけではありません。

この記事では、なぜ世界第3位の生産国であるインドネシアが、コーヒー愛好家にとっての“隠れた宝石”であり続けているのかを探っていきます。

インドネシアは、世界でもっとも多様で個性的なコーヒーの文化が息づく国のひとつです。

インドネシアのコーヒーの歴史は17世紀初頭、オランダ植民地時代に始まりました。当時、オランダ東インド会社がアラビア種のコーヒーをジャワ島に持ち込み、その栽培を広めたことがきかっけです。以来、コーヒーはインドネシア経済を支える重要な農産物のひとつとなりました。

スマトラ島の火山高地から、ジャワ島やバリ島の豊かな茶畑に至るまで、どの地域にも「味わう価値のある物語」があります。17,000を超える島々からなる群島国家であり、赤道直下の熱帯気候と火山が育む肥沃な土壌、年間を通じた安定した気温、そして標高の高い山岳地帯に恵まれた地形は、高品質なコーヒー栽培にとって理想的な条件を備えています。この恵まれた環境の中で、アラビカ種やロブスタ種のコーヒーが古くから生産されてきました。

インドネシア全体の生産量の約75%はロブスタ種、約25%はアラビカ種です。ロブスタ種は病害虫に強く、主に国内消費やインスタントコーヒーに使われますが、スペシャリティ市場ではアラビカ種が高く評価されています。アラビカ種は標高の高い地域で栽培され、スマトラ島・ジャワ島・スラウェシ島・バリ島など、地域によってまったく異なる個性を持っています。

なかでもスマトラ島はインドネシア最大のコーヒー生産地であり、火山性の肥沃な土壌と高地の涼しい気候が、高品質で豆の複雑な風味を引き立て、風味豊かなコーヒー豆を育てています。スマトラ島の「マンデリン・コーヒー」は、世界的に知られるコーヒーで、フルボディで酸味が少なく、しばしば土のような香りやハーブのような風味を持つのが特徴です。

インドネシア産コーヒーの最大の魅力は、なんといってもその「地域ごとの個性の豊かさ」にあります。ここからは、インドネシア各地の代表的なコーヒー産地と、そこから生まれる個性豊かな豆の魅力を見ていきましょう。

【補足】インドネシア特有の「スマトラ式(Giling Basah=ウェットハル)」と呼ばれる精製方法は、豆に独特の香りとコクを生み出し、世界のコーヒー市場でも個性派として評価されています。

スマトラ式(Giling Basah=ウェットハル)

インドネシア独特の精製方法で、特にスマトラ島やスラウェシ島で多く採用されています。

工程の概要:

1. コーヒーチェリーを果肉除去

2. 乾燥させる前に、まだ水分が多く柔らかい状態でパーチメント層(内皮)を剥がす

3. その後、再び乾燥

風味への影響:

• 発酵や乾燥過程で独特の香りがつき、ハーブや土っぽさ、深いコクが出やすい

• 酸味は穏やかで、ボディが重く感じられる

ウォッシュド式(Washed Process)

ウォッシュド式は世界で最も一般的な精製法で、特に中南米やアフリカで多く使われます。

ウォッシュド式の特徴:

• 果肉除去後、発酵槽でぬめり(ミューシレージ)を分解し、その後しっかり洗浄して乾燥

• 風味はクリーンで明るい酸味が出やすい

• 品種や産地ごとの個性がクリアに表れやすい

スマトラ島|マンデリン(Mandheling)
重厚でスパイシーな香りと深いコクが魅力の、インドネシアを代表する力強いコーヒーです!

産地 / 標高:スマトラ島北部(1,000〜1,500m)
品種:アテン、カティモールなど
精製方法:スマトラ式
焙煎の傾向:中深煎り〜深煎り推奨
アロマ(香り):木のようなアーシーさ、ハーブやスパイスも感じる
フレーバー:ダークチョコレート、黒糖のような深み
酸味:弱くまろやか、控えめで角がない
コク(ボディ):重厚でオイリー、しっかりとした飲みごたえ
後味:長く続く、ビターでスモーキーな余韻
カフェイン度数:★★★☆☆(中~やや高め)

こんなときにおすすめ:夜、ひとり静かに過ごしたいとき。音楽や本と一緒に、深い余韻に包まれたい時間に。


焙煎の補足:深煎りにすると甘みとコクが増し、スモーキーでビターな味わいに。浅煎りではハーブやスパイス香が際立ち、軽やかな印象に。


おすすめ抽出方法:フレンチプレス(オイル感を活かす)、エスプレッソ(重厚なボディを楽しむ)、ペーパードリップ(ビター感を引き締める)。

スマトラ島|ガヨマウンテン(Gayo Mountain)
 (例:マンデリン)に比べると、ガヨは少し酸味があり、全体としてバランスの良い味わいが特徴です。また、生産者の多くが小規模農家であり、持続可能な農業にも力を入れている点が評価されています。豊かなコクとチョコレートのような深い風味を持ちつつ、スマトラ特有のスパイシーさとやわらかい酸味をバランスよく兼ね備えた逸品です!

産地 / 標高:スマトラ島北部、アチェ州のガヨ高原(1,200〜1,700m)
品種:ブルボン、ティピカ系、アテン(Ateng)などの在来種
精製方法:スマトラ式(Giling Basah=ウェットハル)
焙煎の傾向:中煎り~中深煎り
アロマ(香り):ハーブやスパイス、チョコレートのような深い香り
フレーバー:ダークチョコ、ナッツ、時にベリーや黒糖のニュアンス
酸味:控えめ〜中程度で、やや柔らかい
コク(ボディ):重厚でしっかりとしたコク、シルキーな口当たり
後味:ややスモーキーで、長く続く落ち着いた余韻
認証:有機認証やフェアトレード認証を持つ農園も多い
カフェイン度数:★★★☆☆(中程度)

こんなときにおすすめ:午前中のひと仕事前や、午後のちょっと贅沢なティータイムに。


焙煎の補足:中煎りではナッツとベリーのバランスが良く、軽やか。中深煎りにすると甘みとボディ感が強まり、飲みごたえが出る。


おすすめ抽出方法:ハンドドリップ(バランスを活かす)、サイフォン(香りを引き立てる)、カフェプレス。

スラウェシ島|トラジャ(Toraja)
 ナッツのような甘みと深いコク、苦味、酸味のバランスのとれた風味で、しっかりとしたボディを持ちつつも飲みやすさが魅力。まるで山の朝霧のように静かで奥深い味わい。エレガントで洗練されたコーヒーです!

   産地:スラウェシ島南部・トラジャ地方
   標高:1,200〜1,800m
   品種:ティピカ系など
   精製方法:スマトラ式またはウォッシュド式
   焙煎の傾向:中深煎り~深煎り
   アロマ(香り):スパイス、カラメル、杉やハーブのような香り
   フレーバー:黒糖、ナッツ、かすかなベリー系
   酸味:まろやかで上品、ややフルーティー
   コク(ボディ):中〜重め、しっとりとした口当たり
   後味:クリーンでバランスが良く、ふんわりと甘さが残る
   カフェイン度数:★★★☆☆(中程度)

  こんなときにおすすめ:心を整えたい朝、丁寧にドリップして気持ちをリセットしたいときに。
  焙煎の補足:焙煎の補足:深煎りではスパイス感とコクが際立ち、エスプレッソ向き。中煎りではハーブや果実の風味がより明るく出る。
  おすすめ抽出方法:エスプレッソ、モカポット(濃厚さ重視)、ハンドドリップ(複雑な香りを楽しむ)。
バリ島|キンタマーニ(Kintamani)
 柑橘のような酸味と爽やかなアロマ。標高1,200m以上の火山地帯で、オーガニック農法が主流です。  南国の太陽と火山が育てた、トロピカルでフルーティーなコーヒーです
   産地:バリ島キンタマーニ高原
   標高:1,200〜1,600m
   品種:ティピカ系、カティモールなど
   精製方法:ウォッシュド式
   焙煎の傾向:浅煎り~中煎り推奨
   アロマ(香り):柑橘類(オレンジ・ライム)や花のような爽やかさ
   フレーバー:シトラス、マンゴー、ほんのり紅茶のような甘み
   酸味:明るくフルーティー、南国感のある爽快な酸
   コク(ボディ):中程度、さっぱりと飲みやすい
   後味:クリーンで軽やか、香りがふわっと残る
   カフェイン度数:★★☆☆☆(やや低め)

  こんなときにおすすめ:晴れた朝のモーニングや、午後のスイーツタイムに爽やかさを添えたいときに。
  焙煎の補足:浅煎りでは柑橘や花の香りが際立つ。中煎りにすると甘みが増し、酸味はやや落ち着く。深煎りはフルーティーさが弱まるため非推奨。
  おすすめ抽出方法:ハンドドリップ(香りを活かす)、エアロプレス(フルーティーさ+ボディ感)、水出し(爽やかで甘い仕上がり)。
バリ島|バリアラビカ(Bali Arabica)
 繊細で香り高く、やさしい酸味とやわらかいボディ、紅茶のような軽快さが特徴です。花のように香る繊細な風味は、リラックスしたい時間にぴったりのコーヒーです!

   産地:バリ島バトゥール山周辺
   標高:1,100m以上
   品種:アラビカ種(在来種)
   精製方法:ウォッシュド式
   焙煎の傾向:中煎りがおすすめ
   アロマ(香り):フローラル、バニラ、ナッツの香り
   フレーバー:軽やかなキャラメル、紅茶のような余韻
   酸味:やさしく繊細、フローラルな酸味
   コク(ボディ):中程度、なめらかで心地よい口当たり
   後味:クリアでやわらかく、上品な甘さが残る
   カフェイン度数:★★☆☆☆(やや低め)

  こんなときにおすすめ:夜のリラックスタイムや、おやすみ前の一杯に。
  焙煎の補足:酸味と甘みのバランスが良く、どの抽出にも合わせやすい。深煎りではキャラメルやチョコ感が強まり、酸はほぼ消える。
  おすすめ抽出方法:ペーパードリップ、サイフォン、フレンチプレス。
ジャワ島|ジャワ・ティピカ(Java Typica)
 かつて欧米に「ジャワコーヒー」として輸出された伝統品種。甘さとフルーティーな香りが楽しめ、まろやかで柔らかな味わい。ジャワという名そのものが「コーヒーの代名詞」だった時代も。歴史を感じる穏やかで親しみやすい味わい。毎日飲みたくなるクラシックな一杯です!

   産地:ジャワ島東部(イジェン高原など)
   標高:1,000〜1,400m
   品種:ティピカ系
   精製方法:ウォッシュド式
   焙煎の傾向:中煎り~中深煎り推奨
   アロマ(香り):キャラメル、ビスケット、かすかな花の香り
   フレーバー:ナッツ、ハチミツ、カカオのような甘み
   酸味:まろやかで穏やか、クラシカルな酸味
   コク(ボディ):中〜軽め、バランスが良い
   後味:なめらかでやさしい、どこか懐かしい余韻
   カフェイン度数:★★★☆☆(中程度)

  こんなときにおすすめ:朝の一杯、ランチ後の休憩に。家族みんなで楽しみたいときにも。
  焙煎の補足:中煎りでは酸味と香りの明るさが活き、軽やかで飲みやすい。中深煎りにするとコクと甘みが増し、チョコやナッツ感が強くなる。
  おすすめ抽出方法:ハンドドリップ(バランス重視)、フレンチプレス(コクを楽しむ)、サイフォン(香りを引き立てる)
コピ・ルアック(Kopi Luwak)とは?
 インドネシアが誇る世界でも希少なコーヒー
スマトラ島、ジャワ島、バリ島、スラウェシ島
   産地:インドネシア(スマトラ、ジャワ、バリなど)
   標高:約1,000~1,600m
   品種:主にアラビカ種(農園によってはロブスタもあり)
   精製方法:ジャコウネコによる自然発酵+スマトラ式 or ウォッシュド式
   希少性:生産量が非常に少なく、手間もかかるため高価格帯
   アロマ(香り):甘く香ばしい香り。焦がしキャラメル、カカオ、杉、ハーブなどが感じられる
   フレーバー:非常にまろやか。苦味が少なく、独特の丸みと優しい甘さ
   酸味:ほとんど感じられないか、ごく控えめ。丸みのある酸味
   コク(ボディ):中程度~やや重め。口当たりはなめらかでクリーミー
   後味:透明感があり、土っぽさをわずかに含んだ自然な余韻が長く続く
   カフェイン度数:★★★☆☆(中〜やや高め)

  こんなときにおすすめ:特別な日に、大切な人と過ごす時間に、贈り物としても最高の選択!

コピ・ルアックは、インドネシア発祥の、世界でも極めて希少で高価なコーヒーです。

最大の特徴は、「ジャコウネコ(ルアック)が食べたコーヒーチェリーが体内で自然発酵され、排出された豆を洗浄・焙煎して作られる」という、他にはない非常にユニークな製法にあります。

もともとはスマトラ島・ジャワ島・バリ島など、コーヒー栽培が盛んな高地で、野生のジャコウネコが完熟した実だけを選んで食べていたことから、その豆の品質の高さが注目されました。現在ではフィリピン、ベトナム、南インドなどでも「シベットコーヒー」として生産されていますが、「コピ・ルアック」といえばインドネシア産が最も有名です。

名前の由来と世界的な呼ばれ方

「コピルアック」という名前は、インドネシア語で

• コピ(Kopi) = コーヒー

• ルアック(Luwak) = ジャコウネコ

を意味し、直訳すると「ジャコウネコのコーヒー」です。

この呼び名が世界中でそのまま使われているのは、コピ・ルアックが単なるコーヒーではなく、インドネシア独自の製法と歴史を持つ特別な存在だから。ちょうど「お寿司」や「相撲」が英語でも SushiSumo と呼ばれるように、他の言葉では置き換えられない固有名詞として文化に根付いています。英語圏では「Civet coffee」とも呼ばれますが、日本ではあえてインドネシア語のまま用い、希少性やブランド感を大切にしています。  

 

コピ・ルアックと他のコーヒーとの違い

• 独自の発酵:ジャコウネコの体内発酵により豆のたんぱく質が分解され、苦味が抑えられる

• 味わい:まろやかでクセが少なく、初心者にも飲みやすい

• 香り:チョコレートやキャラメルを思わせる甘い香り

• 口当たり:通常のアラビカよりも柔らかく、「丸みのある味」として世界中で人気

歴史的背景

17〜19世紀のオランダ植民地時代、現地農民はコーヒーを飲むことを禁じられていましたが、ジャコウネコの排泄物から豆を拾い、焙煎して飲んでいたのが始まりとされます。偶然にも、動物の習性(完熟した実だけを選ぶ)と自然発酵の作用が組み合わさり、極上の味わいが誕生しました。

生産背景と倫理的配慮

近年では観光向け施設での「強制給餌」が問題視されています。そのため、野生採取型(Wild Civet Coffee)や認証農園産といった、サステナブルかつ動物福祉に配慮した生産方法の需要が高まっています。また、多くは小規模農家による手作業での選別・洗浄・焙煎で仕上げられ、フェアトレード、オーガニック認証、トレーサビリティの確保など、持続可能な生産体制も重視されています。

     

天然物と養殖物の違い

• 天然物(Wild):野生のジャコウネコが自然に選んだ実だけを食べるため品質が高く、極めて希少。価格は数十倍になることも。

• 養殖物(Farmed):飼育下で与えるため量産可能だが、味や動物福祉の面で課題が残る。

価格と流通

天然物の市場価格は、1杯あたり5,000〜8,000円、豆は1kgで10万円以上になることも。

世界の高級ホテルや一部の専門店でしか味わえない “究極の贅沢” です!

保存とおすすめの淹れ方

香りが非常に繊細なので、焙煎後は密閉保存し、できれば2〜3週間以内に消費するのが理想です。淹れる際はペーパードリップやフレンチプレスで、湯温90〜93℃がおすすめ。まろやかな風味がより引き立ちます。

まとめ

コピ・ルアックは、その製法・歴史・希少性から、ただのコーヒーではなく「インドネシアの文化を映す特別な一杯」です。名前そのものがブランドであり、世界中のコーヒー愛好家の憧れであり続けています。

これらインドネシア産の豆は、多くが小規模農家によって丁寧に育てられ、環境と人にやさしいコーヒーづくりが根付いています。また、フェアトレードやオーガニックへの取り組みも盛んで、サステナブルな生産にも取り組んでいます。さらに、野生採取や動物福祉に配慮したルアックコーヒーも注目されており、他の産地にはない濃厚さや旨みを求める人に支持されています。

一方で、焙煎や保存状態によっては酸味が強く出る場合もあり、好みが分かれることもあります。総じて、マニア層はインドネシアコーヒーの多様な個性と力強い味わいを高く評価しています。

また生産者の顔が見える透明性の高さは、インドネシア産ならではの大きな魅力のひとつです。世界第3位のコーヒー生産国であり、多様な品種と産地ごとの特徴が楽しめることから、専門家やマニアの間で注目度が高い国です。

特に「マンデリン」や「トラジャ」、「ガヨマウンテン」などの銘柄は、1度飲むと忘れられない独特の味わいとして人気です。世界的にも高い評価を受けており、個性的な風味や産地ごとの違いがコーヒー愛好家から支持されています。

インドネシアのコーヒーは、単なる飲み物ではなく、その土地の自然・文化・人々の営みが凝縮された「物語」です。産地ごとの個性豊かな味わいと、サステナブルな生産へのこだわりは、世界のコーヒー愛好家を魅了し続けています。

香りと物語があふれる一杯を、これからも。

当プログでは、コーヒーだけでなく、紅茶や伝統菓子、現地の食文化まで幅広くご紹介し、インドネシアという国の魅力をまるっとお届けしていきます。